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二人遊ビ 思っていたよりも随分早く仕事が終わって。 こんな事なら剛を誘っておけば良かったと後悔した。 このまま家に帰って寝てしまうのは勿体ないと思うような、そんな時間。今ならまだ剛は起きてるかもしれない。 暫く逢ってなかったわけじゃないけれど。 時間に余裕のある内は少しでも逢っておきたいっていうのが本音。 一度家に送ってもらうと車の鍵だけ取りに部屋へ戻って、すぐ自分の車に乗り込んだ。 そういえば今日、雑誌に目を通しながら何となく聞いていたスタッフの女の子達の恋愛話。 "彼氏が何の連絡も無しに突然家に来たら嬉しいか、嬉しくないか"なんてまるで今の俺の行動を予想したような話題だった。 彼女達は嬉しい派と嬉しくない派に別れていたけれど、剛はどっちなんだろう。 過去に連絡せずに剛の家に行ったことなんて数え切れない程ある。 これまで特に嫌そうな素振りをされた記憶は無いけれど。 まぁ、剛なら女の子みたいに本音を隠して…なんて面倒なことをわざわざしないだろうから本当に気にしていないんだろう。 寧ろ俺が行っても行かなくても実際あまり差はないのかもしれない。 互いの存在が、当たり前過ぎて。 途中、夕飯がまだだった事を思い出してマンションの近くのコンビニで適当な飲み物と多少の食べ物を買って剛の家に着いた。 鍵もあることだし、もしも寝ていたら顔を見てすぐに帰ればいい。 エレベーターに乗るときも、部屋までの通路も仕事でくたくただと言うのに足取りは軽かった。 右手にあった合鍵は滑るように剛の部屋の鍵穴に入り込み慣れた音を立てて扉が開く。 静まり返っている玄関。 いつもは勢い良く出迎えてくれる息子達の影も無い。 もしかしてまだ帰っていなかったのだろうか。 確か今日は早く帰れると言っていたはずなのに。 それとも、やっぱりもう親子仲良く夢の中……? 廊下を進んで行くとリビングのドアをかさかさと引っ掻く音がした。 すぐにそれを開けると大きな茶色の塊が突進して来て、思わずバランスを崩しそうになる。 「何や…一緒に寝てたんちゃうんか」 小声で呟くとつぶらな瞳は俺を見上げて少し首を傾けた。 剛の家のリビングは照明が付いてい無くとも水槽の光がある。 並んでいる大きな透明の箱に少し視線をやりながら、部屋に響いているモーター音の中に埋もれていた声に気付いた。 奥の部屋…つまり寝室から洩れているらしいその声。 それは明らかに剛のものであると分かっても、決して電話で誰かと話しているような様子じゃない。 音を立てないように寝室の前まで移動し、ドアに耳を近付ける。 「んッ……はぁ、ぁっ」 苦しそうな、けれどひどく色を帯びた声。 まさか…でも、もしかして。 ゆっくりと、慎重にドアを少しだけ開けて部屋を覗いた。 「あぁッ!!…も……こぉ…、ちぃ」 荒い息遣いが寝室を支配していた。 思いがけない展開に胸の鼓動が速まる。 ドアを数センチ開けただけではベッドの上にいるであろう剛の姿が見えず、俺は欲するまま静かに扉を押した。 「はぁっ…は、…ぅ」 橙色の照明は剛の裸体をぼんやりと浮かばせている。 膝を立て、上半身をベッドに預け尻を突き出しているその姿は厭らしいとしか言いようがない。 腰元だけに絡み付いているシーツが更に卑猥さを増していた。 剛が振り向かなければ、決して俺の存在はバレないだろう。 けれど開いたドアの隙間からするりとケンシロウが寝室へ入っていってしまった。 ケンシロウは剛が苦しんでいると思ったらしく、ベッドへ上がろうと必死になっている。 「ゃ……ケンシロ…来たらあかんて、パパッ…言うたやん…」 途切れ途切れに言葉を発しながらも、剛は動かしている手を止められないようだった。 俺は眼前の光景にいてもたってもいられなくなる。 「一人で楽しそうやなぁ、剛。俺も交ぜてくれへん?」 びくっと音がしそうな程に剛のしなやかな肢体は一瞬にして強張り、動かなくなってしまった。 「まぁ交ぜてくれんでもえぇわ。俺ここでケンと見させてもらうからさ、続けてよ」 ケンシロウを抱き抱えてベッドの横のテーブルに腰を降ろす。 「な……で…」 高く突き上げた腰をずるずるとシーツへ押し付けながらか細い声を出す剛。 「何で来たかって?」 「今日仕事早く終わってん。時間出来たから可愛い恋人の家行きたいなぁって思うの、普通ちゃう?」 決してこっちを見ようとはしない。 いつも二人で使う大きな枕に顔を埋めたまま。 「つーよして。んな恥ずかしがらんでえぇがな。男なら誰でもしてる事やろ」 枕元まで顔を近付けると剛がぎゅっと掴んでいたシャツで力いっぱい頭を叩かれてしまった。 「っで…!!」 「最悪やっ、勝手に入って来んなや!!アホ!!ハゲッ」 「ハゲてお前…。そのアホでハゲをオカズにして扱いてんのはどこの誰なんやろうなぁ、剛君」 「なっ……!!」 剛が投げた黒いTシャツはこの家に置いてある俺のもの。 わざわざこんなものまで使って俺のことを思い出してるのかと思うと頬が緩むのを抑えられなくなりそうだ。 「俺がおらん時、いつもこんなんしてんの」 「………」 「なぁ…答えろや」 軽蔑なんかしていない。 ましてや嫌いになってもいない。 寧ろそんな感情とは全く逆だ。 誰よりも愛しいから虐めてみたくなって。 誰にも渡したくないから酷くしたくなる。 その涙で潤う大きな瞳を俺だけのものにしたい。 俺以外の誰かを映すことなんて忘れてしまえばいい。 「ぃ…っも……、じゃな…けど…ながい、時とか…」 「長いって、会えへん時間が?」 「…ん……」 「俺のこと考えながらどんな風にシてんのか見せてよ」 「…できへん」 「出来んこと無いやろ。手伝ったろか?」 抱いていたケンシロウをリビングに向かうよう促して寝室のドアを閉めた。 うつ伏せている剛の腰を浮かせ膝を立たせると上から覆いかぶさるように躯を密着させる。 「な…に、すんねんっ!!」 「何って続きや、続き。ほら、こんなんしてたんやろ?」 後ろから剛の手を取ると中途半端に勃ちかけた性器へ触れさせ同時に上下に擦る。 既に粘ついた体液が先端を濡らしていてさっきまでの剛の自慰行為を窺わせた。 「ゃっ……めろや!!」 短く息を吐きながら、それでも悪態をつくことを止めない剛の肩口を少し強めに噛む。 「……ッ!!」 「止めろてどの口が言うてんねん。ココめっちゃ勃ってるやんけ」 それは否定できない事実だった。 見る見るうちに色を変え熱を持った剛の性器。 溢れる体液は剛の手から俺の指先までを伝い、じっとりと濡らす。 その熱を剛の手の上から更にきつく握り込んで擦り上げた。 「ぁッ…あ…!!」 後ろから耳へ舌を這わせてわざとらしく音を立てて舐める。 俺が重ねていた手を退けても剛の動きはもう止まらなかった。 普段色事になんて興味ありませんみたいなすました顔をしてるくせに。 結局はこんな風にちょっと弄られ、攻められれば簡単に乱れ喘ぐ。 例え相手が俺じゃなくても、きっと。 「はぁ…はっ、……んっ…はぁっ……!!」 剛の限界が近いことは分かっていた。 後ろから腰を抱え自分の両脚の間に座らせる。 突然体勢を変えられて一瞬戸惑いを見せたものの剛は絶頂に向けて手や指の動きを速めた。 後ろでそれを見ながら、剛が一際声を高く上げそうになったその瞬間、俺は即座に熱の根元をぎゅっと締め付ける。 「やぁっ……な、で…ッ!!」 「もうイきたいの?」 縋るような瞳で俺を一心に見つめ力強く何度も頷いた。 射精を遮られた熱は苦しそうに震えている。 「いっつも俺より先にイくもんな。我慢足らへんのちゃう」 「どれだけ我慢できるか試してみようや、剛」 「アっ…アホちゃうッ!!なんで……何で、こんなん…」 振り返って俺を見上げる剛の目尻からつっと涙が頬を伝った。 その透明な滴を掬い上げるように紅く染まった頬へ舌を這わせる。 「んッ……」 「だって剛まだ触ってへんとこあるやろ。一人ん時もシてるんちゃうの」 ベッドの端に転がっていたボトルに手を伸ばす。 「コレ、使わな。ちゅーかこんなんどこで手に入れてんの」 それは所謂ローションと呼ばれる液体。 ボトルの中のそれは薄くピンクに色付き片手で蓋を外すと甘い香りが立ち込めた。 「自分で買ったん?それとも、誰かにこれで優しく解してもらった?」 「そんな…ことっ……光一、お願いやから…ほんまやめっ……!!」 結構な高さから剛の太腿にローションを垂らす。冷たいのだろう、剛は液体が躯に触れた瞬間震え、よがった。 「ちゃんと中身減ってるもんなぁ。いつも使ってるんやろ」 激しく首を横に振る剛の汗なのか涙なのか、冷たい雫が顔に飛んだ。 「使ってないのに何で減んねん。言えや、これでナニしてたか。俺に言われへんようなことしてたわけちゃうんやろ?」 片手でぐっと握り込んでいた剛の性器の先端を爪先で引っ掻く。 「ぅッ……!!」 傷付けたいわけでも、苦しめたいわけでも無い。 剛の心に他の誰かじゃなく俺だけを留めていて欲しくて。 決して癒えない爛れたような跡を残していたかった。 零れたローションを塗りたくるように前から手を這わせ剛の後孔の回りを指先で撫でた。 「こ…いち……お願い、手ぇ外してっ。イキた…い、イかせて。…おねが…します」 「まだコッチ弄ってへんのに?」 「ほんまに…我慢できひん…!!ちゃんと言うからっ、これ使って何しとったかちゃんと言うから!!」 「ふっ…ほんならちゃんと言うたらイかしたるわ」 剛は必死だった。 お願い、と荒い呼吸を繰り返しながら俺の胸に顔を押し付けた。 「ぁ……せやからっ…」 「顔上げて言えや」 下唇を強く噛み締め頬には幾筋もの涙の跡が見えた。 剛の泣き顔は俺の中の支配欲を酷く掻き立てる。 もっと泣けばいいのに。俺に縋って泣いて、俺がいなきゃ何一つできないくらいに全てを委ねればいいのに。 「いつももっと恥ずかしい事言うてるやろ。それとも、まだ我慢したいの」 「もぉっ……ム、リ!!」 「ほんならさっさと言えって」 「こ…れ、使うて……」 蚊の鳴くような本当に小さな声で剛は続けた。 「一人で…してた……」 「何を?」 「ッ!!……ぉ…ォ、ナニ…」 「誰の事考えて?」 「こ…ぉいち……!!」 自分で口にした事すら今の剛には快感になってしまうらしい。 膨れ上がった性器は先端から僅かな量の白濁を飛ばした。 「光一ッ!!」 もう少し遊んでいても良かったけれど。 輪を作っていた指を外すと溜まっていた精液が飛び散りシーツは勿論、剛の腹や腿をも汚した。 「はぁっ……はっ…」 体重を完全に俺に預けだらりと肢体を伸ばしたまま剛はただ呼吸するだけで精一杯のようだった。 どろりと剛の腹を落ちていく精液を指で掬い口に含んでみる。 「濃ゆ……」 鼻につく匂い。 粘つく口内。 大きく動く剛の背中を何度か摩りそのまま力を入れて剛をうつ伏せさせる。 「な…に、光一…何すんの…」 「溜まってたんやろ。まだ足りてへんと思って」 「もっ…いい!!」 「遠慮すんな。コッチは触って欲しいて言うてるで」 「……ッ!!」 腰を掴み尻を上げさせて剛の吐き出した精液で濡れた後孔を露にする。 剛は前よりも寧ろこっちを弄られた方が喜ぶ。 「剛さぁ、オナニーする時コッチどうしてんの?」 そこは固く閉じながら、けれど少し指を入れれば容易く奥までくわえてしまった。 「何使うてんの、指?あぁ玩具か?」 「ちがっ…ぅ……!!」 枕を抱きながら剛は小さく震えていた。 少しずつ、でも無遠慮に指の数を増やしても剛のそこは従順だった。 そしてさっき吐精したはずの性器は再び熱を持ち、先走りがシーツに丸い染みを残す。 「お前、後ろだけでイけるんちゃうん。ほんま…ヤラシイ身体」 わざらしく大きな溜め息を吐いた。 剛は俺の方を見ようともせず、ただ顔を隠し自分から漏れてしまう声を押し殺している。 「こっち向けや」 「……ゃ…」 「あっそ」 関係ない。 剛の拒絶なんか。 肩を強く掴んでこっちを向かせると長い前髪の隙間から鋭い視線で睨まれる。 声を零さないようにと噛んだ口唇はうっすらと血が滲んでいた。 剛のこの強すぎる瞳が嫌いだ。 俺を憎んでいるのか愛しているのか、それとも憐れんでいるのか。 どれも正しくてどれも間違っているような気がする。 「剛、そろそろ欲しいもんあるやろ」 「……な…いっ」 「嘘吐け」 濡れた口唇を親指で辿りそのまま剛の口内へ滑らせた。 半ば無理に押し込んだ指を剛は暫く口に含んだままで、舐めようと舌を動かすことも無かった。 「誰の名前呼びながらシテたんやっけ、さっき」 「……こぉいち」 「剛が呼んだのはどこのコウイチ君なのよ。俺じゃないわけ」 じわりじわりと、指を濡らしていく剛の温度の高い口内。 「言わんのやったら帰るけど、俺。えぇの?」 そう言うと剛は俺を見上げ爪先に緩く噛み付いた。 伝わる鈍い痛みが変に感情を揺さぶる。 剛の躯は心よりも随分素直に反応していた。 ゆらゆら揺れる丸い腰。 しゃぶって噛んで、絡み付く舌。 「…れ、て……」 「聞こえへんわ。ちゃんと言えや」 「光一の、欲し…。挿、れて」 その言葉と共に俺の指も吐き出され指先は急に温度を失った。 こんなどうしようもない、下手なAVみたいな台詞を言わせて俺は何を得られるのだろう。 想いよりも言葉を欲してしまうのは確かめて安心したいだけだ。 剛がちゃんと自分の腕の中にいるかどうか。 それを確かめたいだけ。 「欲しいんやったら上乗って自分で挿れれば?お前のいいように突っ込んだるよ」 剛はよろよろと頼りない動きで体勢を変えると、ベッドに腰を降ろしていた俺の肩を押し倒し、上に跨がった。 黒いシャツやデニムに剛の放った精液と今も零れ落ちる先走りが染みを広げじんわりと肌へ伝う。 いつもなら服もきちんと脱ぐのに。 今日はそれを気にかける余裕も無かった。 剛の指がデニムに掛かり下着と共にゆっくりと膝の辺りまで降ろされる。 勃ち上がった俺の性器を幾度か扱き上げ剛は早々に自ら腰を浮かした。 「何してんねん」 上体を少し上げ、剛の動きを止める。 「何…って……」 「まさかもう挿れるつもりちゃうやろな」 「あかん、の…?」 「しゃぶってよ」 「何でっ……」 思わず剛の腰が揺らぐ。ここまできて焦らされるなんて思ってなかったんだろう。 「欲しいんやろ、コレが。…しゃぶれって言うてんの聞こえへんか」 「……っ!!」 緩くパーマのかかった黒髪に指を入れ顔を上げさせる。 「さっさとやれって」 そのまま頭を下肢へ押し付け頬に性器を触れさせると剛は熱くなったそれをそっと握り込んだ。 先端を舌先で擽り、滲み出る体液を絡めては俺の顔色を窺うように上目でちらちらと視線を投げる。 剛は俺が教えたように舌を、口を、指を動かす。 剛にこんな事を覚えさせたのは幼い頃から隣にいる俺。 他の誰でもなく、互いに互いだけが唯一の存在だった小さな世界から剛が抜け出してしまう気がして怖かったんだ。 繋いだ手をいつ離されてしまうんだろうって。 俺よりも大事な何かを剛は見つけてしまうんじゃないかって。 「上手いやんか」 「……んっ…」 大袈裟な音を立てて顔を上下させながら剛は俺の熱を奥までくわえる。 「腰、動いてんで」 俺のモノを奥までくわえ込みながら、自らをシーツに擦りつけるように剛の下肢はしなやかに揺れた。 どうしようもなく厭らしくて、どうしようもなく寂しがり屋で。 俺が放っておくとふらふらと変な奴に寄って行ってしまうからいつだって俺は必死になる。 そんな自分が格好悪くても情けなくても剛だけはどうしても、誰にも譲れない。 「……はっ…」 剛の愛撫が激しさを増し思わず声を上げると剛は満足気な顔をした。 そしてもう待ち切れないとでも言うように俺の上へ跨がると濡れた性器を双丘の間へ押し付けて腰を動かした。 「おねがっ…もぉ、えぇ?挿れてもえぇ?」 涙で顔はぐしゃぐしゃで声もひどく上擦っている。 俺しか見えていない剛を見ているのが楽しくて仕方がない。 「えぇよ、挿れても。せやけど俺がいいって言うまでイくなや」 「………」 「返事は?」 「……は、ぃ…」 俺の腹部に両手を置き剛は躊躇うことなく熱をナカへ埋める。 「…はっ、ぁ……」 真上にある苦痛と快感に歪んだ剛の表情を見上げながら、もう少しまともな愛情表現をできればいいのに、と思う。 愛してるなんて面と向かっては言えなくても、せめて剛が笑い返してくれるくらいの優しさを、愛情を。 どうして俺は投げ掛けてやれないんだろう。 剛は貪るように腰を揺らし、振り乱した髪から滴り落ちる汗と勃ち上がっている性器から零れる体液が俺やシーツに飛び散っていた。 「こぉいち……もぉできひん…光一がして…、奥…してっ」 上体を寝かせ何度もお願い、と言いながら口唇を重ね舌を絡ませてくる。 俺はそれに応えるように滑り込んできた剛の舌を緩く噛んだ。 どう考えても健全ではない自分達をどこか哀れに感じながらも、もう引き返せないところまで来てしまっていることくらい俺も剛も理解していた。 息を荒くしてしがみつくように首に腕を回す剛を抱いたまま起き上がる。 「はぁっ…あ…ッ」 汗で額に張り付いた俺の前髪を剛はそっと掻き上げた。 俺よりも形の良い指で繰り返し髪を優しく撫でられ、どうしていいか分からなくなる。 「…手ぇ、退かせ。イきたいんやろ、さっさとイかしたるわ」 そう言ってベッドへ押し倒し横に向かせると片足を持ち上げた。 「ずっとこのままでおれたらいいのに…」 顔を腕で覆いながら突然剛が言う。 「何で一瞬しか一つになれへんのやろ」 声が震えていた。 「…何言うてんねん。それでもお前は好きなんやろ、コレが」 ぐっと剛を突き上げれば吐息と共に喘ぎが漏れる。 「す、き…やけどっ…満足できるのやって一瞬やし、すぐまた一人になって淋しっ…」 「うっさい、もう喋んな」 心の繋がり程曖昧で不確かなものは無いから。 顔を見ないと不安。 愛を語らないと不安。 躯を繋げないと不安。 淋しいから誰かに縋りたくなる。 そう思う人間は、きっと剛や俺だけじゃないだろう。 そんな事、今更口にはできないけれど。 俺と剛の心はきちんと繋がっているのだろうか。 「ほら…早よ、イけって」 両膝を折り曲げ、より奥へ奥へと自らを剛のナカに進めた。 剛はまるで自分のナカにいる俺を離したくないとでも言うようにきつく締め付けてくる。 「こぉ…いちっ、ナカで……イっ、て…!!」 腰をぶつけ合うその度に聞こえる濡れた音の間隔が短くなっていく。 剛の脚を掴む手もひどく汗ばんでいた。 びくびくと脈打ちながら濁った液体を溢れさせている剛の熱に指を掛ける。 爪先で先端を引っ掻くと更に後ろが締まった。 「は…ぁ、剛っ…!!」 「んっ…あ、あぁッ!!」 一際大きな声を上げて剛は白濁を腹や胸にべったりと広げる。 俺はイきそうになるのを必死に堪え脱力した剛の胸の精液を舌で掬った。 「剛、ナカに出して欲しいの」 「…ん、だし、て……だして」 こんな恐ろしいほどの色気、どうしたら出てくんのやろ。 つくづく、俺と剛は違う種類の人間なんだと思う。 俺を誘うこの情欲的な瞳、それは俺が持ち合わせていない剛だけの特別なもの。 「こぉいちぃ…」 首に剛の両腕が絡み付き舌を突き出して俺の口唇を奪う。 深く口吻けながら腰の動きを速め剛の熱く狭い内部へと躊躇なく全てを吐き出した。 「んんっ…!!」 剛は自分の奥に放たれた衝撃にぎゅっと目を閉じて小さく身を震わせる。 「はぁ…っ、はぁ」 剛の上にどさりと倒れ込むと、剛はゆっくりと手を伸ばし俺の髪を撫でる。 「光一…、愛してる」 「何やねん、急に」 「愛してるから愛してるって言うてんの、それだけやで」 これは真実? それとも偽り? 「信じられへんて顔してるな」 「そんなこと…」 否定をしながらも俺を見つめる視線から思わず顔をそらした。 「どうせ他の男とも寝てんのちゃうかって思ってるやろ」 上体を起こした剛が寝転んでいた俺を見下ろす。 「信じる、信じへんは光一の自由やけど嘘は吐いてへんよ」 一人で扱く時も光一のことしか考えてへんし、と本気とも冗談とも取れないような妖しい笑顔で呟いた。 「だって光一、嘘吐く人は嫌いやろ」 時々剛が"悪女と付き合ったら…"なんて話をするけれど。 まるでコイツが悪女みたいだ。 そして俺はそれにまんまとハマってしまう情けない男。 手玉に取られていると理解していながらも結局剛には勝てない、なんて思ったりして。 だからこそ、セックスの時くらい剛を翻弄したいと考えるのだろうか。 「剛、ナカ気持ち悪いやろ。一緒に風呂入るか」 「ん…うん……」 「自分で掻き出すとこ見せてよ」 「そんなん…嫌やって。光一がして…」 「お前が中に出して言うたんやろ。自分の後始末くらい自分でせぇや」 上体を起こして話せば口唇が触れ合うくらいの距離で視線を絡ませると、剛は舌を突き出して俺の口唇の形を確かめるように辿った。 「光一が…して欲しいんだったらする…何だって、する……」 ゆっくりと瞳を伏せる剛の長い睫毛が微かに揺れて俺の頬を擽った。 「だから……見捨てんで、俺のこと…」 見捨てられそうなのは俺の方だ。 気まぐれな剛のこと、いつ気が変わったなんて言い出すんじゃないかって不安で、訳もなく苛々して。 「愛してるって言うて…光一」 愛してるなんて言葉は適切じゃないだろう、こんな気持ちに。 きっと、もっとずっと汚い感情。 「俺のこと、愛してない?」 「そんな訳ないやろ」 「ほんなら…」 「愛してるって」 愛してる、この世で一番。 そして同時に憎んでもいるよ。 こんな俺にお前はいつまで笑顔を向けてくれる? 「お風呂行こう」 満足そうに微笑んで俺の手を引っ張る剛。 俺はその手をきつく掴み返して剛の躯を引き寄せた。 「剛、俺一回好きになったら一生嫌いにならへんねん、知ってるやろ」 「ぅ、ん…」 逃がさへんから。 終。 |
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