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【進撃ジャンエレ】もしもシリーズ夜会編まとめR-18(再掲)
by かちゃ
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キャプションにも書いた通り、2014年11月まで公開していた作品をまとめた再掲品です。
〈1〉
天井から吊り下げられたきらびやかなシャンデリアが、着飾った人々を照らす。管弦の音と談笑する人々の声が混ざり、華やいださざめきとなって広間を満たしていた。
(場違いもいいとこだな)
調査兵団の兵士であるジャン・キルシュタインはそっと溜息をこぼし、手にしていたグラスに口を付けた。
トロスト区にある瀟酒な館で、新任区長の就任を祝う夜会が開かれていた。そんな場所にジャンがいるのは、団長のエルヴィン・スミスに出席を命じられたからだ。
調査兵団に限らず、どこの兵団の幹部も招待されれば、可能な限り応じると聞いている。幹部が夜会に出席するのは、貴族や商会の重鎮の支援を取り付けるためだ。税金だけでは賄いきれない運営費の不足分を、寄附という美名に変えて稼いでくるのは兵団幹部の手腕にかかっていた。
しかし、入団してまだ四年のジャンに、お偉方から支援を引き出すなんて芸当は無理だ。そもそも、ジャンが夜会へ出ること自体、これが初めてである。
(落ち着かねぇ)
ジャンはグラスに口を付けながら、エルヴィンから夜会への出席を、“お願い”という名で命令された時のことを振り返った。
──支援者から、いつも同じ顔触れでつまらないと言われてね。私たちの顔は見飽きたらしい。
エルヴィンは罪の無い顔で笑ったが、調査兵団のトップが笑顔通りの人物ではないことをジャンは経験から知っていた。
──君のような若い人が調査兵団で頑張っていると知れば、お偉方の財布の紐も緩むのでね。
それなら同期の中でも人当たりが良くて機転の利く、アルミン・アルレルトの方が適役ではないのか。訓練兵時代、教官から軋轢を生みやすいと評されたジャンなど不的確だろう。
夜会に出られるような服がない、マナーを知らないと言ったジャンに、エルヴィンはなんだそんなことかというふうに笑った。
──もちろん、夜会服は用意するよ。明日にでも仕立て屋を呼ぼう。マナーも君ならすぐ覚えられる。
そんなもの覚えたくないです、なんて言えるはずもなく、出席を承諾したジャンは今ここにいる。
(一体何を企んでやがる)
上官に対して抱くには不適切な疑念を燻らせながら、ジャンは残り少ないグラスの中身をあおった。気の抜けた温い液体が喉を下りていく。ウォールローゼ西区の特定地区でしか作られていない高価な発泡酒と聞いたが、今のジャンに銘酒を楽しむ余裕はなかった。
(帰りてぇ)
と思っても、勝手に帰るわけにはいかない。エルヴィンがわざわざ名指しで命じたからには、何らかの考えがあってジャンを出席させたはずだ。エルヴィン・スミスは無意味なことはしない。ただし、どういう意図があってのことか、ジャンは聞かされていない。
(俺に話す必要はないってか)
話さない方がいいとエルヴィンが判断したのだろう。要するにジャンは完全に“駒”であり、作戦の真意など考えず、指示通り動けばいいということだ。そのことにムカツキはするものの、ジャンはエルヴィンの判断を信用していた。腹の底で何を考えているかわからないと思っているが、調査兵団の団長としては有能で信用できると思っている。
けれど、苛立ちは消えない。ジャンには“駒”に徹し切れない部分がある。信用する上官の命令でも、意図がさっぱりわからないのは不安だった。
説明がなければ推し量るしかないが、壁外調査の作戦の意図ならともかく、夜会に連れてこられた意図なんて、異質過ぎて何をどう組み立てればいいのやら、論の立てようがなかった。
(あいつなら、意図を汲み取るのかもな)
ジャンの脳裏にアルミンの顔がよぎった。訓練兵時代は座学でトップ。幼馴染みから「やばい時ほど正解を導き出す」と評される頭脳はエルヴィンからも一目置かれている。
(とりあえず……観察するか)
ジャンは広間を見回した。
エルヴィンにしろアルミンにしろ、未来が透けて視えているわけではない。彼らの目に映るのも、ジャンが見ている景色と同じである。ただ見方が違うだけだ。
(その“だけ”ってのが簡単じゃねぇんだけどよ)
胸の内で愚痴りながら、辺りを注意深く見回していたジャンの目が思いがけない姿を捉えた。
(あいつ、来てたのか)
エレン・イェーガー、ジャンよりもこういう場にいることが意外な人物だった。アルミンと同じくジャンの同期生だが、十五歳で巨人化能力が発現したため、暴走した時に備えて、街からも兵団本部からも離れた古城で暮らしている。エレンが所属するのは、彼の監視と暴走時の抑止力の務めを果たすよう結成された特別作戦班だ。
調査兵団はエレンが持つ力を巨人への反撃の切り札と考えているが、憲兵団や保守派は人類の脅威だと言い、解剖処分するよう主張している。そんな危険人物──実態は巨人の駆逐一筋の死に急ぎ野郎──が夜会に出席するとは思ってもみなかった。
だが、エレンの監視役兼上官のリヴァイや、巨人の研究に滾る分隊長のハンジ・ゾエと一緒ということは、彼もまたジャンと同じく命じられての出席なのだろう。
(けど、あいつが出席するだなんて一言も聞いてねぇぞ)
エルヴィンは何も言わなかった。出席する調査兵団の兵士全員の名をジャンに知らせろとは言わないが、エレンはジャンの同期生である。「エレンも出席するよ」ぐらい言うはずだ、普通ならば。
(つまり、普通じゃねぇってわけだ)
そこにジャンを出席させたエルヴィンの意図があると感じ、ジャンは眉を顰めた。具体的なことはわからないが、何かあるとすればエレン絡みだ。そう直感した。
エレンもジャンと同じく礼装を纏っていた。細い身を包む黒の夜会服がよく似合っている。髪も整髪料でセットされていた。前髪が後ろへ流されて額が露わになっており、いつもより若干大人びて見えた。緊張した面持ちで、リヴァイとハンジの話を聞いている。
エレンの夜会服の襟は光沢のある生地のようで、シャンデリアの灯りが反射していた。襟に弾けた光と、エレンの金の瞳の輝きが相まって、普段よりもずっと魅力的に映った。
いつからか、気付けばジャンは彼に惹かれていた。
訓練兵時代のジャンはエレンと喧嘩ばかりしていた。当時のジャンは安全な内地で楽に暮らしたいと憲兵団入りを目指していた。そんな考えでいたから、巨人を倒すために入団したエレンと反りが合うはずもなかった。が、関係をより悪化させたのはジャンがエレンの幼馴染みミカサ・アッカーマンに一目惚れし、二人の絆に嫉妬したためだ。
(そう、俺はミカサが好きだった……はず、なんだよな)
トロスト区攻防戦の後、マルコの遺した言葉を胸に調査兵団入りを決めた。調査兵団に入ってからもミカサへの思いは変わらなかったはずだ──が、気付いたら、エレンを気にしている自分がいた。何を言っているかわからないと思うが、自分でも何が起こったのかわからないというやつである。
意識していると気付いてしまった当初は、何かの間違いだと自分に言い聞かせ、意識を他へ向けようと努力した。しかし無駄だった。
リヴァイが本部に来ていると知れば、エレンが同行してきてないかと姿を探し、アルミンの研究室で偶然エレンと顔を合わせれば、憎まれ口を利きながら、胸の内では嬉しく思ってる自分がいた。亡き友に「現状を認識する力がある」と評されたジャンは、自分の現状を認識せざる得なかった。
それでも、笑顔を向けられると胸が高鳴り、顔が熱くなる程度の初心な反応をしている内はまだよかった。うっかり思い浮かべた姿をおかずに抜いてしまった後、我に返ったジャンは超大型巨人に扉を蹴破られた気分に陥った。
何でよりにもよって同性の、あんな死に急ぎ野郎に惚れたのか。自分の心なのにままならないものだ。
現状を認識し何をすべきかわかるのがジャンの能力である。「何をすべきか」考えて、最初に引き出した答えは「何もしない」だった。“人類の希望”というクソ重たい期待を背負っているエレンを、同期の野郎からの告白なんて問題で煩わせたくなかったのだ。
また片思いかよ、と我ながら呆れたが、報われない片恋はミカサ相手で慣れている、絶えられると思っていた。
だが、ミカサ相手とエレン相手では勝手が違うと気付くのに時間はかからなかった。ミカサは一にも二にもエレンの女で、ジャンが何を言おうと何をしようと、華麗にスルーされていた。しかしエレンは違う。訓練兵時代、ジャンの挑発に拳が返ってきたように、非常に素直な反応が返ってくるのだ。
ジャンが手を貸せば、にこっと笑って礼を言うし、立体機動で工夫した動きをすると、上手いなと賛辞を送ってくれる。些細なことだが、好意を抱いた相手からの反応はこんなに嬉しいものかと驚いた。
エレンの気性はまっすぐだ。だから訓練兵時代、敵意を持って接したジャンには敵意が返ってきた。好意を持って接すれば好意が返ってくるのである。それがわかると欲が出てきた。好意が恋情に変わる日が来ないだろうかと。
しかし、欲が出ても行動に移さなければ変化は起きない。ジャンは相変わらず何もできずにいた。ミカサに思いを告げることすらできなかったのと同じように。
ミカサのことは過去の思い出として、では今、エレン相手にどうすべきかと頭を捻れば、ミカサ相手の時よりも難度が高いとしか思えなかった。
まず同性という点で、常識という名の壁が立ちはだかる。妄想したエレンをおかずにした時点で、ジャンの心のウォール・コモンセンスは破壊されているが、色恋沙汰というのは片方だけが盛り上がっても事は進まない。相手であるエレンにも壁を越えてもらわなければ成就しないのだ。
現実の世界の壁外調査には進んで行きたがる死に急ぎだが、常識の壁外調査には果たして誘って色好い返事があるかと言えば、望み薄である。実際のところ、訊いてみなければわからないが、試してみるほどジャンは生き急いでも死に急いでもいなかった。
エレンのジャンに対する認識は昔殴り合った喧嘩相手、生き残っている同期生程度のものだろう。最近は普通に会話が成り立つようになったが、親密な仲とは言い難い。立ち位置はコニーやサシャと大して変わらないはずだ。ジャンがエレンを恋愛対象として見ているなんて、想像の範疇外だろう。
そもそも、巨人の駆逐一筋で生きているエレンの頭に、恋愛に割く隙間があるだろうか。
(いや、ない……)
脳内の反語につい独白で答えてしまい、ジャンは肩を落とした。結局今まで通り、同期生として変わらぬ付き合いを続けるのが妥当というところに落ち着く。
「はぁ……」
溜息を吐き、ジャンは頭を冷やそうと、バルコニーに向かって歩き出した。途中、空けたグラスを通りすがった給仕のトレイに置き、新しい飲み物を取る。手すりにもたれ、夜風に当たってチビチビ飲んでいると、背後で微かな足音が聞こえた。ジャンと同じように、風に当たりに出てきた客がいるようだ。何気なく振り返ってみると──
「あれ? ジャン?」
大きく見開いた金色の瞳に射抜かれた。
「よう……」
「お前も来てたんだな」
エレンはほっとしたように表情を緩めた。不慣れな夜会の場で、見知った顔があって安心したのだろう。
それにしても……とジャンは考える。今の発言から察するに、エレンもジャンが出席することは知らされていなかったようだ。上官たちは一体何を考えているのだろう。そんなことを頭の隅に置いて、ジャンは口を開いた。
「こっちはまさか、お前がいるとは思わなかったが」
「オレも、こんな場所に引っぱり出される日が来るとは思ってなかった」
エレンは苦笑をこぼした。
「『巨人化するエレン・イェーガーがどんな姿か見てみたい』だなんて、奇特な人物がいるもんだよな」
ハハッと乾いた笑いを漏らし、招かれた事情を他人事のような調子でエレンは言ったが、内容の悪趣味さにジャンは顔を顰めた。
「そいつぁ……」
「そう、好事家相手の見世物さ。化け物呼ばわりの次は珍獣扱いってわけだ」
エレンは皮肉な言葉を吐き、なんとも複雑な笑みを浮かべた。昔は見なかった類の表情だ。
(変わったよな)
巨人化能力が覚醒してから、エレンを取り巻く環境は激変した。巨人の力が暴走するのではないかと過剰に恐れる人々によって、エレンには様々な制約が課せられた。化け物だと脅えて避けるだけでなく、巨人化する化け物なら何をやってもいいと勘違いし、エレンに危害を加えるバカまで出没するようになった。
そうした周囲の反応に対処するため、エレンは感情を抑えることを覚え、処世術を身に付けた。訓練兵時代と比べると、穏やかに人と接するようになったと思う。
ただし、それは表面上のことで、本質は変わっていない。壁外へ出て巨人を前にすると、昔のように激情剥き出しの顔になる。歪みない駆逐バカだ。
「まあ、珍獣でも見世物でも、兵団の活動資金が集まるならいいと、来る前は思ってたんだけどさ……」
エレンはふうっと息を吐いた。
「なぁ、ジャン」
「何だ?」
「けっこう疲れるのな、こういう場所での付き合いって」
「同感だ」
ジャンは頷いた。何かと意見が異なる相手だが、これには諸手挙げて賛同したい気分になった。訓練兵の頃、教官から「抜き身過ぎる性格」と指摘された通り、ジャンも感じたことを正直に口にしてしまうタイプだ。そのせいか、お高くとまった人々の婉曲な物言いが飛び交う会話は、聞いているだけでも苛々した。真っ正直に「気に食わねぇ」と胸ぐらをつかんだ方がすっきりするんじゃないかと思わずにいられなかったのだ。
「オレさ、会話は挨拶までで、それ以外は喋るなって言われてんだ。『上官から禁止されている』と言っておけって」
「俺も似たようなことを言われた」
エレンのように「喋るな」とは言われなかったが、答えにくい質問には「禁止されている」と返していいと、エルヴィンに言われた。
「でも、そう説明しても、ここの人たち、まるで聞こえてないみたいに繰り返し同じこと訊いてくるんだぜ。すげぇしつこくてさ、兵長とハンジさんが来てくれなかったら、オレ『黙っててくれ』って叫ぶとこだったよ」
参ったと、エレンはバルコニーの手すりにもたれ、息を吐いた。
「叫んでたら団長の面目丸潰れになってたな」
ジャンが揶揄の言葉を口にしても、エレンはいつものように反論してこなかった。余程神経をすり減らしたのか、手すりに置いた腕に頭を伏せ、「来るんじゃなかった」なんて呟いている。
「同じ相手にするなら、巨人を相手にしてるほうがいい……」
「おい……」
「巨人相手なら、削げば終わる」
駆逐バカ極まれり。とはいえ、ジャンもエレンがそう言いたくなる気持ちは理解できた。巨人との比較はしなかったが、ハンジの巨人談義に付き合うのとどっちがましかとは思ったのだ。
「ああ、帰りてぇ。目の前に旨そうな料理が並んでるのに、食えねぇし……辛い」
手すりに懐いたエレンの嘆きに、ジャンは軽く目を見開いた。
「お前、食ってないのか?」
こくりと頷き、エレンは顔を上げた。
「兵長にできれば食うなって言われた。飲み物も」
「何でそんなこと……」
「オレを化け物呼ばわりする連中が一服盛るかもしれねぇから」
さらりと言われて、ジャンは冷や水を浴びせられた気分になった。これがエレンが置かれている現実なのだ。しかも、本人が“そういうものだ”と受け入れているから、余計にやるせない。
「どうしても食いたかったら、他の客も取って食ってる大皿から自分で直接取れって。間違っても、どこの誰とも知らねぇ奴が差し出した物は食うなって言われた。だから、何とか自分で取ろうとしてたんだけど、その度に話しかけられたり、何でか『どうぞ』って皿を差し出されたり……。あれって全部、オレに一服盛ろうとしているのかな。そう考えると落ち込む」
「いや、善意もあるんじゃねぇの?」
いくら何でも、皿を差し出した人間全てがエレンに悪意を抱いているとは思えない。
ジャンが魅力的だと思ったように、夜会服に身を包み、髪を整えた今夜のエレンは人目を惹く華やかさがあった。元々、顔立ちが整っているせいもあって、仕立てのよい衣装に身を包み、すらりと姿勢のよい姿は、黙って立っていれば良家の子息に見えないこともない。お近づきになりたいと考えた有象無象が、料理や飲み物を差し出す親切を働いたとしても不思議ではなかった。
「そうかな」
自分がどう見られているか、全く自覚のなさそうなエレンはよくわからないといった様子で首を傾げた。そういう何気ない仕草も今夜の礼装姿だと、普段はないほのかな色香を感じた。じっくり見ていたくなるような、逆に直視するのが気恥ずかしいような、相反する思いにジャンの胸は苦しくなる。
空を見上げれば月が明るく輝いていた。広間の喧噪から離れ、バルコニーに礼装で二人きり。俗に言ういい雰囲気というやつである。別に何かしようとは思わないが、雰囲気に浸るぐらいしても罰は当たらないだろう。
しかし、そんな雰囲気も、グウ〜ッという空腹を訴える音によってぶち壊された。
「うう、ひもじい……」
ぐったりと手すりにしなだれかかり、エレンは情けない声を上げた。色気より食い気な辺り、サシャと大して変わらないかもしれない。まあ、豪勢な料理が並んでいるというのに、全く口にできないのでは嘆きたくもなるだろう。それにジャンもそうだが、まだ食べ盛りの年頃である。
「しようがねぇ。俺が取って来てやるよ」
憎からず思う相手が「ひもじい」なんて嘆いているのだ。放っておけるわけがない。
「他の客も取ってる皿の料理を俺が取ってこりゃ、変な心配せずに食えるだろ」
何だったら毒味もしてやるぜと言うと、手すりに伏していたエレンが顔を上げた。
「オレは助かるけど、いいのか?」
申し訳なさそうな顔で訊かれ、ジャンは驚いた。こんな顔をされるのはある意味不意打ちだった。空腹は心細くさせるものだが、ジャンに対してこんな顔をするほど、エレンは参っているということだろうか。
「別に料理取って来るぐらい何でもねぇよ。サシャに満腹になるまで運べって言われたら断るけどよ」
そう言って、ジャンは手にしていたグラスを手すりに置いた。
「飲み物はそれでも飲んでろ。俺が飲んで何ともなかったんだ。安心して飲めるだろ」
しかし、グラスに顔を近付けて匂いを嗅いだエレンは緩く首を振った。
「悪い。オレ、アルコールは禁止されてるんだ」
「は?」
「ここを警備する憲兵団からの要請。酔っ払って暴走されたら困るから酒は飲むなって」
「はあ? 何言ってんだ。酔って暴走したのはあいつらの方じゃねぇかよ。お前の腕、切り落としといて、よくンなこと言えるな」
昨年、酔っ払った憲兵団の兵士がエレンに絡んだ挙げ句、半刃刀身を振り回して左腕を切り落とした。あの光景をジャンは一生忘れないだろう。
「まあ、そういうことなら、ジュースか炭酸水でも取ってきてやるよ」
「おう、ありがと。悪いな」
「ああ、大人しくそこで待ってろ」
一度振り返ってエレンに声をかけ、ジャンは広間へ続く扉を開けた。
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